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2014年11月

2014年11月24日 (月)

「アベノミクス解散」に隠れる争点の本質

 21日、衆議院解散となって、午後3時の一次公認発表の後も
さみだれ式に上申される公認申請を深夜まで調整し、明けて土
曜日にようやく帰奈。
昨日、選挙事務所開きの神事や政見放送撮りなどバタバタの選
挙準備だ。
解散してしまった以上、四の五の言ってられない、闘うしかな
い!、と思っているが、それでも街の空気が何とも不思議な感
じだ。
やはり大義がない、争点が見えない、の声が充満している。
安倍総理は解散後の会見で「アベノミクス解散」だと大見得を
切った。アベノミクスの信を問う、と。
しかし、何とも消しがたい違和感は、国民の間に通奏低音のよ
うに響いている。
本来、政権運営上、衆参共に圧倒的多数を有している与党がア
ベノミクス推進に何ら立ち止まる必要はないはずなのだから。
さらに、消費税引き上げ先送りについても国民に信を問うと言っ
ているが、これについても民主党政権時に制定した消費税法に
は景気弾力条項を附則の18条として「施行の停止を含め所要の
措置を講ずる」と三党合意で盛り込んでいる。
前号でも書いたが、経済状況を理由とした消費増税先送りのオ
プションは既に法定されているのだ。
 やはり、結局は、建前上、経済政策や消費増税見送りを解散
の理由としているが、その本質は、『本来争点にならないはず
の「経済」に焦点をあてることで、それ以外のわかりやすい
「争点」を提示しない』ということが、今回の解散戦略だ。
すなわち、「権力維持のためだけの解散」ということでしかな
い。
そして、その先には、原発政策や集団的自衛権等の「安倍カラー」
政策への白紙委任を得ることが意図されていると思われる。
 この安倍政権の解散戦略に対抗する野党としては、経済政策
以外の争点に焦点をあて、経済政策については、あまり触れず
におくのが、本来ベターな戦略かもしれない。
しかし、民主党政権時に、財務省の抵抗を抑え消費税法の景気
弾力条項を立案し、ビジネス界出身の政治家として経済問題に
だれよりもコミットしてきた者として、今回は、あえて、経済
政策上の争点を突き詰めて考えてみたい。
僕なりに考えてみると、次のようになる。
 安倍総理は、今回予定されていたさらなる2%の消費税引き上
げが景気の妨げになると判断したと言っている。
そして、「消費税率8%から10%への引き上げ先送り」につい
ては、与野党ともに共通認識となっているため、もはや争点で
はない。
では、与野党の認識が隔たっていて、大きく問わねばならない
のは、「安倍政権は、5%から8%に引き上げた時に過度に景
気に楽観的になり、十分な対策をとらなかった」ということだ
と思っている。
 三党合意により消費税の引き上げを決めた時には、同時に低
所得者対策、附則18条など、景気に対する配慮も合意事項だっ
た。
また、附則18条は、消費税率引き上げに耐えうる経済状況を、
引き上げ時までに作り出すという政治の意思を示したものだっ
た。
しかし、安倍政権は、三党合意の「引上げ」という部分のみを
履行し、低所得者対策は十分に履行せず、過度に景気に対し、
楽観的であったということが問題の本質であり、安倍政権の慢
心だったとして問われるべきだ。
 その他にも、自公で軽減税率を公約とするようだが、これだ
けでは、低所得者対策としての効果は薄い。
それよりは、民主党が主張していた消費税還付措置(給付付き
税額控除)の方がはるかに実効的な低所得者対策となる。複数
税率を完全否定はしないが、消費税還付措置を軸にした低所得
者対策をとるべきだ。
 以上のように、アベノミクス(3本の矢)そのものを争点化す
るよりも、5%から8%への消費税の引き上げ時の政策判断の問
題、低所得者対策の不備を問うべきではないか。
 加えて、安倍総理が解散の記者会見を行った際、「景気を理
由とした、再度の消費税率引き上げの見送りはしない」と明言
したことについても、多くの人が違和感を感じている。
要するに、8%への税率引き上げを2017年4月に1年半先延ばし
するものの、その時に、たとえ景気が回復していなくとも、今
度は税率引き上げを断行するというのだ。
 違和感の背景には、今回の消費税率引き上げ見送りは、「経
済最優先の論理」ないしは「アベノミクスの論理」で判断され
たものだが、2017年の消費税率引き上げ断行は、「財務省の論
理」で組み立てられたものであり、この矛盾する二つの理屈が
存在することで、安倍首相の言葉が「自己矛盾」を起こしてい
るからだ。
 今回、安倍政権が、8%への引き上げ後の景気対策に失敗し
たことで、財務省につけいる隙を与え、一年半の税率引き上げ
先送りと引き換えに、一年半後の「経済状況を無視した」税率
引き上げを確約させられてしまった。これは財務当局に主導権
を奪われてしまったことを意味する。
 加えて、安倍総理は、消費税引き上げ見送りにもかかわらず、
2020年度にプライマリーバランスを黒字化するという財政健全
化目標を変えていない。
引き上げ先送りにもかかわらず、達成がただでさえ危ぶまれて
いた財政健全化を維持したということは、税率引き上げ先送り
と引き換えに、10%後の更なる消費税引き上げや、その他の増
税措置について、総理が財務当局に押し込まれていないかを危
惧するところだ。
 また、安倍総理が、今回の先送りと引き換えに財務省に「譲っ
た」ものの内容いかんによっては、安倍総理は、今後の経済財
政政策の主導権を財務当局に奪われたことになる。
 このように、今回の消費増税先送りについては、先送りの背
景にある本質、すなわち、先送りと引き換えに総理が財務当局
に「譲った」ものは何か、消費増税について、主導権を財務当
局に渡してしまった安倍総理の判断の是非が問われることにな
る。

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2014年11月18日 (火)

附則18条軽視の末の無責任解散

 安倍総理が消費税率の引き上げを延期し、衆議院を解散する
ことが確実となった。
消費税率の引き上げ延期の根拠は、民主党政権の時に定めた消
費税率引き上げ法案の附則第18条と呼ばれる景気条項だ。
2012年の通常国会で、消費税増税の根拠となる「社会保障の安
定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税
法等の一部を改正する等の法律」を成立させた。
その際、デフレに苦しむ日本経済を危惧し、法案に景気条項を
盛り込むことに当時与党議員の立場で先頭に立って動いた。
今年4月の消費税率引き上げが決定された際にも、日本経済の
現状を考え、バラマキ的な低所得者対策の必要性を主張してき
た(現代ビジネス 2013年12月28日 「消費税率引き上げと低所
得者対策 ~国民全員に4万円ばらまけ!~」)。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37943
しかし、安倍政権は、「消費税増税により一時的な消費の落ち
込みがあってもすぐに回復する」とし、十分な対策をとらずに、
5%から8%に消費税率を引き上げた。
その結果、予想通り、日本経済の回復は政府のシナリオ通りと
はならず、17日に発表されたGDP速報値は実質GDP成長率が前期
比年率-1.6%と想定外のマイナス成長となった。
政府のシナリオは脆くも崩れ去り、消費税増税が景気に悪影響
を与えたことが白日に晒される中で、附則第18条を根拠に消費
税率の再引き上げは延期されることになる。
もう少し詳しく附則第18条を見てみる。
――――――――――――
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行う
ための消費税法等の一部を改正する等の法律
附 則
(消費税率の引上げに当たっての措置)
第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させ
ることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状
況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成
32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程
度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望まし
い経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実
施その他の必要な措置を講ずる。
2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応
が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率
の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前
防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することな
ど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況
の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応す
る観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係
る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、
名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確
認し、前2項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案
した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
――――――――――――――――――――――
 附則第18条第1項の中に、
「平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成
長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程
度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるため
の総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。」と定め
られている。
もうすでに、平成23年度から25年度までの経済成長率が公表さ
れているが、実質GDPの平均成長率は1.1%、名目GDP成長率の平
均成長率は0.1%となっている。
附則第18条に示されている10年間平均で実質2%、名目3%のGDP
成長率を達成しようとする場合、機械的に試算をすると、26年
度以降、実質GDPは毎年2.4%、名目GDPは毎年4.3%の成長が必要
となる。
また、4-6月期、7-9月期が実質GDP、名目GDPともにマイナス成
長であったことから26年度の経済成長率をそれぞれ0%として仮
においてみると、附則第18条で明記されている実質2%成長、
名目3%成長を達成するためには、27年度から32年度の間に実質
GDP成長率は毎年2.8%のペースで、名目GDP成長率については毎
年5%のペースでの成長が必要となる。
これは、とんでもない数値だ。
 つまり、附則第18条が示すような「望ましい経済成長率の在
り方に近づけるための総合的な施策の実施」を加速させなけれ
ばいけなかったにもかかわらず、政府は、消費税増税が日本経
済に与える影響について過度に楽観的になり、消費税増税とい
うブレーキを踏み続けようとした。
消費税の引き上げ先送りは、この状況で当然の判断だ。しかし、
附則18条を軽視してこの状況まで無策に終わり、挙句の今回の
解散は、現政権の経済政策の誤りを覆い隠すためのものの何物
でもない。
誰が判断を間違えたのか、責任を問わなければならない。

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2014年11月12日 (水)

GDP速報値と改定値、そして解散

 解散の風が強まり、とうとう永田町は一色となってしまった。
消費税率引き上げ先送りを決めての解散とも報じられている。
候補者擁立という選対委員長の仕事も最終局面を迎えることに
なる。
 解散について、突然?、と思われる方も多いと思うが、その
匂いは相当前から漂っていた。
官邸のスポークスマンである菅官房長官は、毎日2 度、記者会
見を行っている。とりわけ最近は消費税増税の判断のタイミン
グについての質問が繰り返し行われていた。
そして10 月22 日午前の記者会見で、微妙な軌道修正が図られ
た。
 これに触れていたのは、僕の知る限り東京・中日新聞論説副
主幹の長谷川幸洋氏くらいではないか。
菅官房長官は10 月22 日までは、消費税率の引き上げの判断は
12 月8 日のGDP 改定値を見るとしてきた。しかし、22 日午前
の会見では、11 月17 日のGDP 速報値を見て判断すると微修正
を図った。
(15分24秒あたり)
 しかし10 月22 日の時点では、ほとんどこの件については、
報道されていない。しかし、11 月17日と12 月8 日の違いは、
国会会期中かどうかにより、大きな意味合いの違いが発生する。
11 月17 日は臨時国会の会期中であり、12 月8 日は閉会中と
なる。つまり、11 月17 日に判断するとした場合、首相の「衆
院解散権」がちらつくこととなる。
 一方、11 月17 日と12 月8 日にそれぞれ公表されるGDP 速
報値とGDP 改定値では、何が異なるのかは、あまりよく知られ
ていない。
そこで、まずGDP 速報値とGDP 改定値の違いを整理しておく。
1.GDP 速報値の作成
 GDP 速報値は、生産活動を大括りに示す「鉱工業生産指数」、
「生産動態統計」(いずれも経済産業省)がベースとなり作成さ
れる。
これに、例えば家計消費支出を求める場合には、「家計調査」
や「家計消費状況調査」(いずれも総務省)といった家計に関す
る需要サイドの統計を加味することになる。
一方、企業の設備投資については、後述する企業の需要サイド
の統計である「法人企業統計」(財務省)が公表されていないた
め、生産サイドの統計のみで数値が作成されることになる。
 また、企業の在庫投資については、製品・流通・仕掛品・原
材料と4 つの段階で分けて推計されている。
速報値の段階では、製品在庫については「鉱工業生産指数」、
流通在庫については「商業販売統計」が用いられる。
仕掛品や原材料の在庫については、「法人企業統計」の情報が
必要となるが、速報値の公表段階では公表されていないため、
時系列の予測手法により推計して用いているということになる。
2.GDP 改定値の作成
 GDP 速報値が公表される11 月17 日とGDP 改定値が公表され
る12 月8 日の間に、「法人企業統計」(財務省)が12 月1 日に
公表される。
GDP 改定値では、法人企業統計など速報値と改定値の間に公表
された統計を用いて、企業の設備投資や在庫投資を中心に再度
推計を行い作成される。
3.GDP 速報値の予測
 一方、GDP 統計の作成方法が大まかに公表されていることか
ら、民間シンクタンクでは毎月、GDP の予測値を公表している。
現段階では、鉱工業生産指数などの9 月の統計が公表されてい
るため、17 日のGDP 速報値の作成に用いられる統計が出揃っ
ていることとなる。
 そこで、7-9月期のGDPの民間予測を見てみると、9月の段階、
10月の段階、11月の段階と時を経るにしたがい予測値が低下し
ていることが確認できる。
 例えば、9月の段階では、7-9月期のGDPの予測値は、平均的
に前年同期比年率4.01%との見通しが公表されていた(日本経済
研究センター ESPフォーキャスト9月公表分)。
しかし、10月の段階では7-9月期のGDPの予測値の平均は前年同
期比年率3.66%と下方修正された(同ESPフォーキャスト10月公
表分)。
現段階での7-9月期のGDP予測値は、中央値が前期比年率2.1%
と報道されている(11月7日付ロイター「指標予測=7-9月期実
質GDPは年率2.1%、増税反動減から回復鈍く」)。
 年率2%成長と聞くと、今までの日本経済を考えれば高い成
長率のように聞こえるかも知れない。しかし、4-6月期のGDPが
前期比年率-7.1%と大きく落ち込んでいたことを踏まえれば、
消費税増税に伴う消費の反動減から景気が回復していない姿が
明らかとなる。
さらに、9月、10月、11月と新たな統計が公表される度に民間
の予測は低下している。
今まで政府は消費税率を引き上げに伴い一時的に反動減が発生
しても、その後は景気が回復するとしてきた。
しかし、現段階では、明らかにそのシナリオが崩れていると言
える。
4.速報値と改定値のズレ、そして解散
 一方、GDP速報値とGDP改定値は、大きく変動する可能性があ
ることが広く知られている。
これは、設備投資や在庫投資を中心に、法人企業統計など新た
な情報をもとに改定値を作成するためである。
したがって、もし本当に景気の状況を安倍政権が判断をしたい
のであれば、10月22日より前の答弁の通り12月8日のGDP改定値
を待つ必要がある。
 可能性は低いと思うが、7-9月期のGDP成長率が高くなり、景
気回復シナリオが復活する可能性もある。
 しかし、改定値の公表を待つことができない事情が安倍政権
にある。それは、国会のスケジュールであり、首相の解散権に
直結していると考えるのが妥当だ。
いよいよ、と気持ちを引き締める。

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